こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
前回の記事【子どもが幸せに生きていくために大人ができること①~子どもをみる目を養おう編~】の続きをお送りします。
生活リズムを整える
近頃は特に、大人も子どもも生活リズムが乱れていますよね。朝スッキリと起きられず、会社や学校にバタバタと出かける。みんなどこか疲れています。
メディアの普及によって情報量が増えたことで、テレビやタブレットの使用時間が増え、多くの人はメディア漬けになっています。それにより、夜更かしが常態化し、睡眠時間の不足や睡眠の質の低下が問題視されています。
夜更かしをしていても、睡眠時間が取れていれば良いのではないか。という意見もあるかもしれません。しかし、夜更かしは、脳の松果体で作られる「メラトニン」という睡眠リズムなどを調節するホルモンの分泌を抑制します。また、メラトニンには子どもには性的成熟を抑制する働きがあります。そのため、メラトニンの分泌が不足すると、睡眠の質や量が低下するだけでなく、早熟の問題も抱えることになります。
また、脳内の神経伝達物質で精神を安定させる働きがある「セロトニン」の分泌も夜更かしにより低下します。セロトニンの分泌量の低下は、イライラしやすくなり、攻撃性や衝動性の高まりを生み出すと言われています。
これらの問題は、早寝早起きの習慣を身につけることで改善されます。そして、それだけでなく、朝日を浴びることでサーカディアンリズム(概日リズム:体内時計)が整い、体調も良くなります。日中の活動量が増え、できることも増える。活動量が増えれば夜も寝つきが良くなり、ぐっすり眠ることができますよね。
子どもの生活リズムを整えるためには、まずは大人が生活リズムを見直さなければなりません。家庭でのタイムスケジュールが早寝早起きのパターンになると、子どもはそのタイムスケジュールに引っ張られて早寝早起きができるようになってきます。
まずは、起きる時間を決める。逆算して寝る時間を決め、入浴、夕食と全て前倒しで時間を決めていきます。
時間だけではなく、夕方から寝るまでの間の過ごし方についても、工夫が必要です。テレビやタブレットなどの強い光を目に入れることを避け、本を読んだり家族で今日あったことなどの会話を楽しんだり、ゆったりとした時間を過ごすことで気持ちを落ち着ける。そんな風にして、眠る準備を整えます。
勉強や宿題が気になるかもしれませんが、できるだけ学校から帰ってすぐ、または朝に行うようにするなど、睡眠の妨げにならないように取り組む時間帯を工夫することも必要です。実際、勉強は起きてすぐ取り組むと効果的だと言われています。
メディア依存を放置すると、家族の結びつきが弱まります。家族間でのコミュニケーションがその子のコミュニケーション能力の基礎を育てますが、メディア依存はその経験を減らします。相手の気持ちを想像できない、言葉をうまく使えず奇声や暴力で自分の気持ちを伝えようとするなど、衝動的・暴力的になり関わりにくい子になってしまう危険があります。
そうならないためにも家族一丸となって、生活習慣を見直すことが重要なのです。
ゆとりの中に生まれるものがある
現代の子どもたちは、学校以外にも塾や習い事で予定がぎっしり詰め込まれ、ゆったりと過ごす時間がありません。そして、みんな疲れています。
「ゆったり過ごすこと」や「遊ぶこと」は “ダメなこと” のようにさえ言われています。
「勉強」や「習い事」がそんなに良いことなのでしょうか。そう疑問に思うことはありませんか?
「勉強」いわゆる「学校での学習カリキュラム」は、平均的な能力を育てることを目標にしているといわれています。その能力も、“生きるため”と言うよりは“試験で点数を取るため”のものです。しかし実際のところ社会に出て求められるのは、“自分で考え行動する力“。高学歴でもその力が身についておらず、苦しむ若者が多いのも事実です。
このことからも、時間の限り勉強ばかりしていても、生きる力は身に付かないということがわかると思います。もちろん勉強は子どもの可能性を広げるために、とても必要なことです。しかし、テストで点数を取るためだけの学び方では、生きる力を伸ばすことには繋がりにくい。
それでは、どのようにして子どもの生きる力を伸ばしていけば良いのでしょうか。
その答えは「自由な時間」にあります。
のんびりと自由な時間を過ごしリラックスすると、人は想像力を発揮するようになります。
「のんびり」「ごろごろ」としている時に、ふと何かを思いついたりしますよね。
毎日遅くまで残業している人よりも、定時や短時間の残業で仕事を終わらせる人の方が集中して取り組むため、仕事のクオリティが高く、生産性があります。
「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」という本でも、フィンランドの人は余暇を重視し、自分の時間や家族・恋人・友人と過ごす時間を大切にすることで、毎日身を削って残業している日本の人より生産性が高いと書かれています。確かに世界的に有名な企業も多数ありますよね。
脳を休めることがパフォーマンスを上げる最善の方法だと知っているため、フィンランドの人たちは積極的に休みを取ります。そして、バカンスの間(3週間ほど)仕事を忘れて過ごせるように、「これからバカンスの期間なので、○月○日まで連絡が取れません」とメールでお知らせが入るのだそうです。それぐらい割り切れるって、すごいですよね。バカンスが終わればしっかりと切り替えて仕事に励むので、誰も文句は言いません。
日本では「休むことは悪」という価値観がありますが、休んで充電する間に人は考えを巡らせ、学んだ知識を自分のものにするのです。
子どもたちも自由な時間があると考えを巡らせたり、実際に行動に移したり、試行錯誤してみたりと、実践力が育つチャンスがたくさんあります。そこに誰か一緒に過ごす人がいると、触発されて行動力が増したり、一緒に取り組むことで協調性が育ったりします。
さらにそうした経験が、ひらめきを生むようにもなります。
「自由な時間」、言い換えるならば「ゆとり」が子どもの生きる力を育て、新たな生産性を生むということです。
ゲームやタブレットで遊んでいるのは「自由な時間」ではありません。ただ刺激に反応しているだけの時間です。
自分の内側の声を聴く時間。これこそが本当の「自由な時間」なのです。
遊びが魂を活性化させる
「遊んでばかりいてはダメ」これはよく聞くフレーズですよね。
遊びよりも勉強の方が大事。偏差値の高い学校に行って、いい会社に就職して、安定した生活ができるようになってほしい。
多くの人がこう考えているのではないでしょうか。
しかし、この考え方ではもうこれからの社会を生きていくことはできません。
ただ会社の方針に従って、上司に従って、仕事をする。それが良いとされていた時代はありました。でも今は、自分で考え行動する力がある人を世の中は求めています。組織に所属する人よりも、自分で自分の道を切り開いて行く人が求められているのです。
創造力で世の中をより良く変えていく。その環境は整いつつあります。
「遊び」には、それ自体に意義があります。
人間関係・知識・技術は、遊びを通して学ぶことで、より大きく育ちます。その経験がまた、自信を育てます。
児童文学の「モモ」という作品の中でも、自由に想像力を膨らませながら遊んでいた子どもたちから、遊びを奪い<子どもの家>に集め、監督する大人から決められた「なにか役に立つことをおぼえさせるための遊び」しかできなくなるというシーンがあります。そのような環境になると、子どもたちは「たのしいと思うこと」「むちゅうになること」「夢見ること」を忘れていく。そして、やれと命じられたことを嫌々やって、好きなようにしていいと言われると、今度は何をしたらいいかわからなくなる。そんな描写がされています。
これは物語の中だけのお話ではなく、現代社会にも通じるものではないでしょうか。
子ども同士で想像したものを共有し、膨らませ、自分たちのテンポで話し合いながら遊びを作る。その中で、考え、工夫し、表現し、アイデアを出し合う。
大人になって社会の一員として活動する中でも、これと同じ過程でものごとを進めます。子どもの遊びから生まれるものは、大人からすれば高いクオリティが望めないから、「意味がない」「無駄だ」と思う人もいるかもしれません。ですが、何をするにも誰だって最初から完璧にはできませんよね。少しずつステップを積み重ねて、やがて誰かの心に響くものが作り出せるようになるのです。
子どものうちに、遊びの中でこのステップを積み重ねられなかった人は、大人になってから何かを自分で作り出すことが出来ません。いつも、大人が求める“正解”を探るだけで、自分の考えは表現することができないのです。
ゲームはまさにこの思考の繰り返し。自動的に流れてくる刺激の中で、ただ「やらされて」いるだけで、自ら創造する「余白」がありません。人工的な道具なので、「人が考えるもの」の枠を越えないのです。自然が提供する「無限の可能性」は、「人が考えたもの」以上の刺激を子どもたちに与え、そこからたくさんのことを学び、考え、創造していく力を身につけさせてくれます。
その過程は、子どもたちの魂を活性化させ、生きる喜びを感じられる心を育てるのです。
「あ!卵があった!」
— 松田ちかこ@心理カウンセラー&保育士 (@Growing_up_offl) 2022年4月12日
「これはティラノサウルスの卵なんだって!」
「えー!そうなんだ!」
楽しそうに遊ぶ子どもたち
私から見えるのは
埋め込み式のチェーンポールだけ
だけど彼らには
恐竜の卵が見える
そしてここは
ジャングルなのだろう
空想の世界?
いや
大人が忘れてしまった世界かな
季節感を磨く
日本には四季があり、自然の変化を感じるチャンスに恵まれています。
自然の変化を感じることで、日々の生活の楽しみや味わいが増し、暮らしが豊かになります。
教育学者である宮原誠一さんは、
日本のように四季の変化のはっきりした美しい風土にめぐまれている国で、子どもたちに季節感をみがかせない法はない。どんなに社会が複雑になり、どんなに科学・技術が発達しても、民族の生活の土台は風土であり、われわれは日本列島という地理的環境のなかで一生をすごす。自然環境を変改して利用できるだけではなく、自然環境が変化に富んで美しく、その美しさを生活のなかで味わうことができるということは、その民族にとって無条件的にひとつのすばらしい幸福である。子どもたちには、その幸福を身に感じながらそだち、その幸福をたいせつにするわかものになってもらいたい(宮原誠一)
と、地域の自然との関わりが薄れ始めた高度経済成長期の頃から、季節感は大切にすべきだということを、いち早く指摘していました。
自然の移ろいを身体で感じ、動植物の動きや変化を知る。そうすることで、子どもたちは自然環境の仕組みを知り、自分も自然の一部だと実感することができます。自分が自然の一部だと実感できる人は、地球全体の自然の営みを考え活動する、そんな広い視野で物事を考えられる人になれるでしょう。
自らの「生」と「死」に対しても、真摯に向き合い、人生を大切にすることができるようになります。
日本には、古来から季節ごとに様々な儀式を行う文化があります。
代表的なものを例に挙げると、季節の変わり目の「節分」(現代では立春の前日にだけ行うようになりましたが、元々は立春・立夏・立秋・立冬の前日は全て節分でした)、「五節句」(人日、上巳、端午、七夕、重陽)がありますよね。これらの日には、季節の植物や食べ物で身を清め、生命力をもらい、厄祓いや五穀豊穣、無病息災、子孫繁栄などを祈ります。
先人が残したこうした行事を通して、私たちは季節の移り変わりを感じ、自然との繋がりを感じるきっかけを得られるのです。
こうした文化が今もなお残っているというのは、とても幸運なことですね。
家庭でも積極的に季節の行事を取り入れたり、公園をはじめ、草木や花、土、風の匂いを感じられる場所に身を置いてみましょう。自然と触れ合える機会を子どもに提供することもまた、子育てをする上でとても大切なことです。
大人も子どもも自然の営みから、自分自身が自然と共に生きていることを感じ、命を大切にすることの重要性を学びとってくださいね。
「自分を犠牲にするのはもうやめよう編」に続きます
長い記事になってしまったので、前編・中編・後編に分けてお送りしています。
次回は後編の「自分を犠牲にするのはもうやめよう編」です。
<参考文献>
「幸せに生きる力」を伸ばす子育て―日本の子ども観・子育て観を見直す
進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」 (海士の風)
フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか (ポプラ新書)
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