こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
子育てや保育・教育で子どもと向き合っていく中で、どのような接し方が子どもの成長にいい影響を与えるのか、また、反対に悪い影響を与えてしまう接し方をしてしまっていないか、ということを気にされてはいませんか。
今回は「ほめ方」「叱り方」という観点から、子どもの成長を促す接し方をご紹介したいと思います。
接し方を考える
まずは、子どもに対してどんな接し方をしているのか振り返ってみましょう。
今回は「条件付きの接し方」「無条件の接し方」という観点をご紹介します。
ご自身がどちらに当てはまるのか、そしてそのメリット・デメリットを確認してみてください。
条件付きの接し方
行動の結果によって愛情の注ぎ加減を調整し、大人の思い通りになるように子どもをコントロールしようとする接し方です。
条件付きの接し方では、子どもにとって愛情の変化そのものがエサのようになってしまい、愛情をもらうためにほめられることをしようとしてしまいます。
見返りを求めてしか行動できなくなるということです。
「そんなことをしていると遊んであげないよ!」と親子の時間を何かの罰として取り上げてしまうと、愛情を取り上げられたと子どもは感じてしまいます。こうした愛情をエサにする接し方をしていると「言う通りにしないと愛してもらえない」と思うようになります。
子どもにとって親の愛情は一番欲しいものです。
それを得るために、親の顔色を窺って「ほめられること」をして「よい子」であろうとするようになるのです。
こうした接し方は、一時的に言うことを聞くようになるかもしれません。しかし、相手が変われば途端に言うことを聞かなくなったり、年齢が高くなるにつれて自分勝手な行動をするようになったりしてしまいます。
また、条件付き(外的な承認)でしか自尊感情をもつことができなくなり、自己評価が安定しなくなります。
失敗することを恐れ、やりたいことにもチャレンジできなくなってしまう。そんな心理を生みやすくなるのが条件付きの接し方です。
無条件の接し方
どんな時も変わらずに愛情を注ぎ、行動の理由に向き合い、子どもの気持ちに寄り添う接し方です。
失敗してしまったときでも、機嫌が悪くなって言うことを聞けなくなってしまったときでも、ありのままを受け止め、つらい気持ちを理解してくれる。こうした無条件の接し方は、愛情を常に感じられます。
その上で、どうすれば良かったのかをゆっくりと話し合い、学びを促し、解決に導きます。
親子で遊ぶ・一緒に過ごすと約束していたことは、必ず守ります。たとえ他のことで言うことを聞かなくても、それは別のことと考えるのです。
失敗しても、よい子じゃなくても、どんなときも自分は親から愛されている存在。そう思えることで、自分のありのままを受け入れられるようになります。
自分の存在や人格を否定されない接し方なので、叱られたときにも自分の間違いと真摯に向き合うことができるようにもなります。
「失敗しても大丈夫」そう思える無条件の自尊感情がもてることで、やりたいことにどんどんチャレンジしていけるようにもなります。こうした心理を育てられるのが無条件の接し方です。
考え方や行動の理由を考える
多くの場合、子どもの行動そのものや結果だけを見て判断してしまうものです。しかし、これは「決めつけ」で子どもを見ている状態。
なぜ、子どもがその行動をしたのかを考えずに、結果だけで「悪い」と決めつけ、罰を与えてしまいます。
子どもは子どもなりに色々と考えて行動しています。
「なぜそうしたのか」という視点を持ち、子どもの考えやどんなきっかけがあったのかをよく観察する。そのうえで子どもの話をゆっくりと聴いてあげましょう。
そして、一緒にベストな解決策を探しましょう。
大切なのは、子どもを一人の人間として信頼し、尊重して接することです。
大人の固定観念を押し付けない
私たちは、知らず知らずのうちに「こうあるべき」という固定観念を身に付けてしまっています。しかし、それは自分が「正しい」と思っているだけで、ほかの人にとっては正しくないこともあります。また、時代が変われば正しくなくなることもあります。
「男の子だから」「女の子だから」という性別に対する固定観念。
「お姉ちゃんだから」「お兄ちゃんだから」と下の弟や妹を優先させ我慢をするのは当たり前。
子どもは一人で何もできないから、大人の言うことを聞くもの。
これは、大人の思い込みですよね。
こうした考えを押し付けて、それで言うことを聞く子は「よい子」。そう単純に思ってしまうのは危険です。
この「よい子」は「大人にとって都合のよい子」。
将来、自分の押し込めていた気持ちを爆発させたり、自分で何も決められない、自分の好きなものもやりたいことも分からない、そんな人になってしまう可能性があります。
自分の考えは、本当に「正しい」のか、他の視点を持つ人はどう考えるのか。そんな広い視野を持って子どもと接していくことも大切ですね。
適切な声掛けとは
ほめるにしても叱るにしても、外見的な部分(能力や見た目)に注目する声掛けは避けましょう。
それよりも、子どもの努力や経過に注目することが大切です。
また、年齢や発達段階に合った声掛けを意識することも大切です。
その子に合わない要求は、負担でしかありません。
大人の都合で「~しなさい」と無理な要求をしていないか振り返ってみましょう。
意外と「こんなの出来て当然」と思うようなことでも、子どもにとっては大きな負担となっていることは多いものです。
子どもが”今できていること”や”少し頑張ればできること”を目標に、スモールステップで課題を与えるように心がけましょう。
ほめ方のポイント
「何でもかんでもほめればいい」かと言うと、そうではありません。ほめ方を間違えてしまうと、自尊感情が逆に低下してしまうこともあります。
例えば、「すごいね」「賢いね」「優しいね」等の言葉は、一見よさそうに聞こえます。しかし、”何が”すごいのか具体的にわからない称賛は表面的に感じられて、実感がわきません。「賢いね」「優しいね」は、うれしい反面”そうじゃない自分は認めてもらえない”というプレッシャーを感じさせてしまいます。
「そんなことを言われると、ほめたくてもほめられない」そう思うのはごもっともです。
もちろんこれらのほめ言葉を使ってはいけないというわけではなく、本当に心からそう思ったら、素直に伝えてあげてください。
そのうえで、次のポイントを意識し、普段から積極的に意識して子どもをほめましょう。
<ほめ方のポイント>
- 結果よりもプロセス(努力、姿勢、やり方)をほめる
- 具体的にどんなところが良いのかを伝えてほめる
- 子ども自身がどう思ったのか、どう感じたのかを質問する
一緒になって喜んで、嬉しい気持ちを共有するのも大切です!
叱り方のポイント
ほめ方以上に悩むのが叱り方。
「厳しくするのはよくない」というのはよく聞く、けれど、叱らなきゃいけないときもあるんじゃないの・・・?叱らずに子どもの思うようにさせるのが良いとは思わない。
だけど、それならどう叱れば子どもの良くない行動をやめさせられるんだろう?
そう思う方は少なくないと思います。
子どもの困った行動や間違いを解決するために、必ずしも「厳しい口調」「怒った態度」は必要ありません。
感情的になると逆に正しい思考ができなくなりますし、(詳しくはこちらの記事をお読みください:『怒りやすい子どものためのアンガーマネジメント』)子どもをますます興奮させてしまうことにもなります。
冷静に諭すだけで十分な場合の方が多いものです。
こうしたことを踏まえたうえで、叱るときには次のポイントを意識してみましょう。
<叱り方のポイント>
- 「ダメ!」「違う!」をできるだけ使わない
- 結果ではなく努力やプロセスに目を向ける
- 好ましくない行動の理由を説明する
- 親の気持ちを正直に伝える
子どもが何をしたかったのか、何を言いたかったのかを理解し、ありのままを受け止めましょう。そのうえで手を差し伸べ、どうすれば良かったのかを冷静に話し合いましょう。
<罰を与える叱り方がNGな理由>
- より攻撃的・反発的な態度を生み出す
- 力(暴力や高圧的な態度)を使った問題解決方法が正当化される
- 親子関係に亀裂が入る
- 罰を与えても反省を促さない
子どもは大人を見本にして人との関わりを学習します。罰を与えることが正しい(必要なこと)と思ってしまうと、子どもの中にもその考え方が植えつけられてしまうのです。
罰を与えるのではなく、子どもの気持ちを受け止め、冷静に話し合うことで成長を促しましょう。
マキャベリの君主論
加害行為は、一気にやってしまわなくてはいけない。そうすることで、人にそれほど苦汁をなめさせなければ、それだけ人の恨みを買わずにすむ。これに引きかえ、恩恵は、よりよく人に味わってもらうように、小出しにやらなくてはいけない
という言葉があります。
人に厳しくする必要がある時は、繰り返したりせず一気に躊躇わず。
人に優しくするのは、少しずつ何度も。
こうした関わり方が人との信頼関係を築くポイントです。
ネチネチ、クドクド、お説教をする上司や先輩って嫌な印象だけで、言われたことは全然響きませんよね(笑)
その反対に、時々厳しい一言で叱られる時もあるけれど、普段からよく「ここが良いね」「頑張ってるね」と声を掛けてくれる上司や先輩は尊敬するし、言われた一言一言が心に残っているものです。
どちらも同じことをあなたに伝えようとしているのだとしても、これだけ印象が違うことで受け取り方が変わってしまうのです。
前者の伝え方では伝わらず、後者の伝え方はよく伝わる。こうした伝わり方の違いを知っておくことで、これからの人間関係も変わってくるでしょう。
適切なほめ方と叱り方を学び、子どもの受け取り方を考え、伝わりやすい伝え方ができると、子どもがあなたに向ける目が変わります。
親子の信頼関係を深め、安定した親子関係を築いていきましょう。
大好きな人にほめられる喜び
大好きな親にほめられ、認められると子どもはそれだけでとても嬉しいのです。
頑張った自分に誇りを持ち、自信がつくことで「もっと頑張ろう」「チャレンジしてみよう」という勇気も湧いてきます。
こうしたほめられる喜びを素直に感じられるように、大人は日頃から接し方を振り返り、ほめ方叱り方に気を付けるようにしましょう。
自分はこんなに丁寧に接してもらわなかったのに、なぜこんなに配慮しなければならないのかと思うこともあるかもしれません。
やはり、時代の移り変わりによって子育てにおいて必要とされるものは変化しています。専門家の研究が進み、わかってきたこともたくさんあります。
自分がされなかったことを子どもに与えるのは、きっと抵抗を感じると思います。
しかし、お子さんを大切に思い、幸せになってほしいと願う気持ちもまた素直な気持ちなのではないでしょうか。
ご自身のそうした矛盾する気持ちをどちらも素直に受け止めながら、できるところから変化させてもらえたらと思います。
最後に
最後に子どもの力を伸ばす「3Hのことば」というものをご紹介したいと思います。
<3Hのことば>
・ほめる
・はげます
・(視野を)ひろげる
この言葉は、子どもとの接し方の真髄だと私は思っています。
子どもの力を伸ばすためには、大人のこうしたサポートが必要なのです。
人にはそれぞれ素敵な力があります。それを埋もれさせてしまってはもったいないですよね。
私たちが関わる今の子どもたちだけでも、その素敵な力を埋もれさせないようにしたい。そんな思いが少しでも伝わることを願って、この記事を届けたいと思います。
<参考>
【Amazon.co.jp 限定】【特別動画付き】モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方 特別動画付き
「なるほど!」とわかる マンガはじめての他人の心理学 [マンガ心理学シリーズ]
きびしい社会を生き抜く人になる! こども君主論 (齋藤孝の”こども訳”シリーズ)
子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」
※「自分でできる子に育つ ほめ方叱り方」「マンガはじめての他人の心理学」は2022年8月現在kindle電子書籍でprime reading(Amazon primeに加入されている方は無料)で読めます。この機会にぜひ読んでみてくださいね。
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マキャベリの『君主論』に
— 松田ちかこ@心理カウンセラー&保育士 (@Growing_up_offl) 2022年7月19日
・加害行為は一気にしなくてはいけない
・恩恵は小出しにしなくてはいけない
という言葉がある
人に厳しくする必要がある時は
クドクド繰り返さず一気に簡潔に
人に優しくするのは少しずつ何度も
そんなバランスが
人に信頼されるコツ
子どもへの叱り方や
ほめ方も同じ
▽こちらも合わせてお読みいただけると嬉しいです
▽著書