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~自分の心・相手の心を理解して笑顔あふれる毎日を~ 心理カウンセラー松田ちかこのofficialブログ

EQを高めるために~情動知能の重要性~

 

こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。

 

人生における成功や社会的な成功というものは、IQ(知能指数)の高い人が得られるものだ。

そう思っていませんか。

実はIQが高いからといって必ずしも成功するわけではありません。

では、何が成功のカギとなるのでしょうか。

それはタイトルにもある『EQ』。

今回は、この『EQ』についてのお話です。

 

 

 

EQとは

EQ(emotional intelligence quotient)とは、心の知能(EI:emotional intelligence)を測定する指標、すなわち『心の知能指数(情動知能)』のことです。

 

アメリカの心理学者ピーター・サロヴェイとジョン・メイヤーによって、1989年に論文「Emotional Intelligence」で発表された概念で、その後、ダニエル・ゴールマンのよって体系化され、著書「EQ:こころの知能指数」が話題となり広く知られるようになりました。

 

EQは ”自己や他者の感情を知覚し、自分の感情をコントロールする知能” です。メタ認知能力(自分の認知(考えていること)を客観的に把握する能力)が思い浮かぶ方もいるかもしれませんが、メタ認知はEQの一部の能力です。

 

目に見えるものだけで判断するのではなく、『心の目』で見えるものを素直に感じ取り、自分だけでなく他者の気持ちや立場、周囲の状況などを広い視野でとらえた判断ができる力と言えます。

 

「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」

星の王子さま』で語られるこのセリフ。

これこそがEQに通じるものではないでしょうか。

IQとEQ

IQは一般的によく知られているように、知能指数のことです。

そして、EQは前述したように心の知能指数のことです。

 

『EQ:こころの知能指数』の著者ダニエル・ゴールマンが「どのような職業に就職できるかはIQに依存するが、就職した後、成功するかはEQに依存する」と述べています。IQとEQは適応するものが異なるということですね。

ですので、IQとEQは混同されるものではなく異質の知性です。

 

「IQ(高)×EQ(低)」という人もいれば、「IQ(低)×EQ(高)」という人もいます。(高い低いというのは極端な表現ですがここではわかりやすいようにこのように表現しています)

 

IQは持って生まれた能力で、生涯を通じで大きく変化することはありませんが、EQは先天的な要素が少なく、教育や学習を通して高める(伸ばす)ことができるものです。

このことについて、ダニエル・ゴールマンは

EQは、教育可能だ。EQを高めることによって、子供たちは持って生まれたIQをより豊かに発揮することができる。

と述べています。

情動知能の構造

情動は、私たちの行動に大きな影響を与えているものです。時に衝動的に行動してしまい、後になって「なぜ、こんなことをしてしまったのだろう」と後悔することも少なくありません。

この情動をうまくコントロールする能力であるEQ。

EQはどのような構造で成り立っているのかをご紹介します。

 

イエール大学の心理学教授ピーター・サロヴェイがEQについて定義したのは次の5つです。

  1. 自分自身の情動を知る 自分の中にある感情をつねにモニターする能力
  2. 感情を制御する 感情を適切な状態に制御しておく能力(情動の自己認識の上に成り立つ)
  3. 自分を動機づける 目標達成に向かって自分の気持ちを奮い立たせる能力
  4. 他人の感情を認識する 共感する能力(情動の自己認識の上に成り立つ)
  5. 人間関係をうまく処理する 他人の感情をうまく受けとめる能力

自分の感情、他人の感情というものと向き合うということですが、これには心理的な抵抗が生まれるものです。

特に、怒りの感情と向き合えない、怒りをどうコントロールしたらいいのか分からない、という方は多いはず。

では、怒りをコントロールするためにはどうしたらいいのかを次にご説明します。

怒りを静めるには

怒りは大脳辺縁系から生じるものです。脳の前頭前野によって大脳辺縁系で生じた怒りをコントロールできている間は適切な行動がとれるのですが、大脳辺縁系の声が大きくなっていくにつれて、怒り(本性)が行動を支配しはじめます。

 

怒りを静めるための方法として挙げられるのは次の通りです。

  • 怒りの発端となった理由をもう一度問い直してみる
  • 怒りを喚起する要因のない環境に身を移して、急増したアドレナリンのほとぼりが冷めるまで待つ(怒っているときは、脳内にアドレナリンが大量に分泌され興奮状態になります)⇒つまり、言い争いになった相手からしばらく距離を置くということ

 

よく、怒りを発散させる「カタルシス」は”気分がすっきりする”と言われますが、実はこれは脳が興奮状態になり、一層カッカとしてしまいます。

一旦、頭を冷やしてから相手と向き合い問題を解決する方がはるかに効果的でしょう。

 

また、怒りの予防策として「ネガティブな気持ちが浮かぶたびに紙に書きとめる」という方法も効果的です。ぜひ、お試しくださいね!

 

アンガーマネジメントについて詳しく知りたい方はこちらの記事をオススメします

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EQを最大限に発揮した状態とは

EQを最大限に発揮している状態、それは「フロー」状態(ゾーンに入るとも言う)です。

自分自身を「フロー」状態にもっていく能力こそEQの最高次の発現であり、仕事や学習に情動を有効活用している究極の状態と言えます。

目の前の課題に集中するあまり、自意識を忘れ、エゴが消失するという忘我の境地。

「フロー」状態になると、自分の行為を完璧にコントロールでき、状況の変化にも完璧に対応できます。

そのため、抑うつによる倦怠感や不安による動揺にとらわれていては「フロー」状態に入ることができません。

 

「フロー」状態に入るためには

  • 目の前の課題に意識的に注意を集中する
  • 自分の得意分野で少し高めの目標に挑戦する

といったポイントを押さえ、物事に取り組むと良いでしょう。

 

精神疾患の治療と集中力>

余談ですが、ある動画で『foc.US』というゲーム機の存在を聞いたことがあります。

『foc.US』は、脳卒中精神疾患に効果があるとされている電気治療法「tDCS (経頭蓋直流刺激:脳に微弱な電流を5~30分流す)」を利用し、脳を刺激し集中力を高めるゲーマー用ヘッドセットです。(※18歳未満使用不可)

医療機器として開発が進められていたそうですが、医療機器とは認められていません。"医療機器"じゃなければいい、ということで"ゲーム機"として販売されています。

(研究がどれほど進んでいるのか、また、安全性が確認されていないものをこうして販売するというのは、日本ではなかなか有り得ませんね 笑)

 

この『foc.US』が販売された経緯は、2015年くらいから、精神疾患の治療法として「脳深部刺激療法(松果体近くに針をさし、弱い電気を流すもの)」が注目され始め(元々、電気療法は1950~60年代に取り入れられていたそうですが1970年代に薬物療法が主流になったようです)、これに近いものとして「TMS治療(頭蓋骨に電磁波を与えるもの)」を取り入れる病院が現れるようになったことにあります。

このTMS治療を使えば「脳の中の雑音が消え集中できる」「もっと強いものを使うと人の心が読める」なんて言われています(真偽のほどは定かではありませんが)。

 

電気治療の効果の真偽はさておき、それだけ私たちの脳は、最も大切なことを見失い、雑音に気をとられているということがわかると思います。

抑うつ感情や不安を上手くコントロールするEQを高め、今最も大切なことに『focus』しなければなりませんね。

 

▽参考までに載せておきます(笑)

対人関係における知性

自分自身の情動がコントロールできるようになったら、他者の情動にどうアプローチしていくかが次の課題となります。

対人関係で重要な知性は、ハワード・ガードナーとトーマス・ハッチによって次の4つの要素に分類されています。

<対人関係で重要な知性>

  • 組織力 人間のネットワークを作り上げ調整する、リーダーに欠かせない能力
  • 交渉力 争いを未然に防いだり、解決したりする調停能力
  • 連帯力 他人に共感したり心を通じ合わせたりする能力、他人の関心を的確につかんで対応できる
  • 分析力 他人の感情、動機、関心などを洞察する能力

これらの能力は、洗練された人間関係を営むのに必要な要素で、さらに言うと社会で成功する上で欠かせない要素です。

 

しかし、ただ相手に合わせて、相手の好みどおりに自分を変えるのは健全とは言えません。

『自分の本心を正直に口に出さず、相手が反応を見せる前から意図を読み取ろうと頑張ってしまう』『どんな人にも好かれようと、嫌な相手にも愛想をふりまく』

優しく温和で、相手の反応に敏感な人は、きっと思い当たるところがあると思います。

外に向けた顔と内面を矛盾させたまま生きている。そこに苦しさを抱えていますよね。

 

社会的知性を使える人間であるためには、自分の本心に対して正直である能力が必要です。

”社会的な常識やエゴにとらわれず、自分の中の最も深いところにある感情や価値観に従い、どんな結果も受け止める覚悟で行動すること”

これが大切なのです。

上手な伝え方

対人関係を良好なものにしていくためには、前述したように自分の本心に対して正直であることが必要になります。

他者と協力して何かを成し遂げるためには、相手の行動に対してのフィードバックが必要になりますが、相手が傷つき殻に閉じこもってしまうような言い方をすると、そのフィードバックが改善の役に立たないものとなってしまいます。

逆に言うと、相手が受け取りやすい言い方をすれば、相手のパフォーマンスが上がり生産性の高いチームを作ることができるのです。

 

ここでは、ハリー・レヴィンソンが示した上手な伝え方のポイントをお伝えします。

  • 具体的に言うこと  良い部分と改善する問題点を具体的に伝える
  • 解決策を示すこと  どうすれば改善できるか、問題処理の方向を示す
  • 直接伝えること   面と向かって1対1で伝える
  • 気持ちを察すること 相手に伝える内容や口調がどう伝わるかを察する(つまり共感するということ)

これらは、相手の問題点を指摘するときにも、相手の良いところをほめる時にも共通して使えるものです。

アレントレーニングでも「ほめ方」や「促し方」をお伝えするのですが、ポイントはまさにこれ。

ぜひ、あなたが悩んでいる対人関係においても取り入れてみてもらえればと思います。

グループIQを高めるためには

伝え方のポイントをおさえて相手と関わっていくためには、やはり自分の感情を落ち着かせた状態でなければなりません。

すぐ怒りを爆発させる人や他人の感情を考慮しない人がいると、周囲の人の心理的動揺が思考に悪影響を及ぼし、その人たちのパフォーマンスが下がります。

 

特に組織運営をする上では、これは死活問題。

複数の人間が協力し合って仕事をする組織運営においては、「グループIQ」というグループの各メンバーが持っている才能や技術の総合力が問われます。

グループIQを決定する最大の要素は、やはりEQの高さ。

EQが低く、情緒的・社会的な要因(恐れ・怒り・競争意識・恨み等)でトラブルを起こすグループのメンバーは実力を十分に発揮することができません。

逆に、メンバーがお互いにそれぞれの能力を認め合い、才能を十分に発揮できる環境を作り上げることができれば、そのグループは実力を十二分に発揮することができます。

 

特にリーダーとしてその組織を運営する立場の人は、メンバーそれぞれの能力を把握し、その能力が十分に発揮できる環境づくりや声掛けを工夫する必要があります。そうすることでメンバーそれぞれがフロー状態になれば、グループIQは格段に高まるはずです。

最後に

世間ではIQの高さばかりが注目されがちですが、円滑な社会生活を営んでいくためには、EQの高さが重要になるということがお分かりいただけたかと思います。

 

多くの人が抱える対人関係の悩み。これも、ここでご紹介したいくつかのポイントを意識してEQを高めることで、少しずつ解決されていくはずです。

 

より良い対人関係の形成と、仕事での十分なパフォーマンスの発揮のために、是非EQに注目してみてくださいね!

 

 

<参考>

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

こころの知能(EQ)とは:情動知能の理論<「教育と医学:特集一知力を育む」1999年3月号>

バカと無知―人間、この不都合な生きもの―(新潮新書) 言ってはいけない

<引用>

星の王子さま (新潮文庫)

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

 

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