こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
生きていると大切な存在との別離を経験することがあります。
失った事実を受け入れるのには、長い時間が必要なものです。
何年経っても思い出しては涙が溢れるほど、どうしようもなくその存在を想う。
悲しいや苦しい、どうして?といった感情や思考を越えて、溢れ出る涙の意味がわからないほどに。
そのような別離の経験をしたときには必ず「いつまでも考えていても仕方ない、忘れた方がいい」と言う人が出てくるでしょう。
自分のことを思って言ってくれているのはわかるけれど、「誰もわかってくれない」とより一層、心を閉ざしてしまいたくなります。
忘れられるのなら、こんなにも悲しまないのに。
あなたはこのような経験をしたとき、どのような言葉をかけてもらいたいですか?
身近な人がこのような経験をしている姿を見て、どう声を掛けてあげようと思いますか?
今回は、この問いを深く考えられる絵本をご紹介します。
くまとやまねこ
文 :湯本香樹実
絵 :酒井駒子
発行:2008年4月30日 河出書房新社
このブログで以前ご紹介した『あなたがおとなになったとき』の作者である湯本香樹実さんと、『よるくま』の作者である酒井駒子さんの絵本です。
絵はすべてモノクロで版画のような絵柄です。しかしどこか温かみを感じられ、読み終えた時にはとても穏やかな気持ちになります。
まだ大きな悲しみを経験したことがない子どもたちには、わからない感情かもしれませんが、こうした絵本から少しずつ他者を思いやる気持ちを育てていってもらえたらと思います。
登場人物
・くま
・ことり
・やまねこ
あらすじ
クマと小鳥は、大の仲良し。
しかしある朝、小鳥は死んでしまいました。
悲しくて泣くクマ。
クマは森の木で作った小さな箱に花びらを敷き詰め、小鳥をそっとその中に入れます。
どこへ行くにも、クマは小鳥を入れたその箱を持ち歩くようになります。
森のみんなに箱の中身を尋ねられ、箱を開けて見せると、みんなは困った顔をしてこう言います。
「くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ」
クマは自分の家に閉じこもるようになります。
しかしある日、久しぶりに窓を開けると天気が良く、外へ出掛けてみることに。
そこで出会ったのがヤマネコ。
ヤマネコは、おかしな形の箱を持っていました。
その箱の中身が見たくなったクマは、見せてほしいと頼みます。
するとヤマネコは、クマが持っている箱の中身を見せてくれたらいいよと答えます。
少し迷いながらも、クマはヤマネコに箱の中身をみせるとヤマネコは、
「ことりがしんで、ずいぶんさびしい思いをしているんだろうね」とクマに共感を示してくれました。
そして、おかしな形の箱を開け、バイオリンを取り出し演奏してくれます。
クマはその音色を聴きながら、小鳥との色々なことを思い出し、小鳥の死を受け入れていきます。
そのあと、小鳥と一緒によく日向ぼっこした場所に小鳥を埋めてあげました。
ヤマネコは綺麗な石を見つけてきて、埋めたところに置いてくれました。
小鳥を大切に思う気持ちを胸に、前を向き始めるクマ。
そんなクマに、ヤマネコは一緒に旅をしないかと誘い・・・
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このような、お話です。
とても悲しいシーンから始まる物語。
読むのがつらいと感じる方も少なくないと思います。
悲しみと向き合うのは、できれば避けたいことですが、それを乗り越えた先にはきっと、優しい世界が待っています。
ヤマネコの言葉は、悲しみを乗り越えていくためのとても素敵なきっかけ。
そんなきっかけをこの絵本を読んだ方にも掴んでもらえたらなと思います。
最後に
悲しい気持ちをはじめとした、ネガティブな気持ちは否定されがちですが、「つらかったね」「悲しかったね」と理解を示してもらえることはとても必要なことです。
否定されると、自分の中でも自分の素直な気持ちを否定して無くしてしまおうとします。
しかし、押し込めれば押し込めるほど、消えてはくれません。
自分の気持ちは、ただ素直に感じることで、受け入れることができるようになります。
受け入れられるようになって初めて、手放せるようになるんですよね。
この物語のヤマネコのように、素直な気持ちに寄り添ってもらえると、より自分の気持ちを受け入れやすくなります。
できれば、お互いにそうして寄り添い合えるような心の余裕を持ちたいものですね。
この絵本を読んで、少しでも寄り添いの気持ちが広がっていきますように。
最後までお読みいただきありがとうございます
<ご紹介した絵本はこちら>
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