
こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
周囲に求められるように自分を演じ、社会に馴染もうとする。
これは私たち人間が、社会的動物(社会を形成して生活する動物)であるからこそ、孤立を恐れて行うものです。
社会を形成していくためには必要なことですが、「本当はこうしたい」があるのも事実。
多様性が叫ばれるようになった現代では、ありのままで生きることを求める人が増えるようになりました。
今回ご紹介するのは、人間として生きなければならなくなったクマのお話。
ありのままで生きる選択肢を奪われたクマは、何を思い生きていくのでしょうか。
また、近年ではクマの被害が相次ぐようになりましたが、それは人間が彼らの生活を圧迫し、苦しめているからこそ。
絵本の中でも人間の身勝手な開発による自然破壊について描かれる場面があり、色々なことを考えさせられます。
是非、じっくりと読んでみてください。
ぼくはくまのままでいたかったのに……
文 :イエルク・シュタイナー
絵 :イエルク・ミュラー
訳 :大島かおり
発行:1978年10月15日 <初版>
2024年6月4日 ほるぷ出版 <新版>
元々は1978年に出版されていた絵本ですが、2024年に新版として再出版されています。
内容は現代にこそ必要とされる、自然破壊への警告や多様性の尊重が感じられるものとなっており、全く古さを感じません。
むしろ、初版された時代にこの内容の絵本を考えられたことの方が驚きを隠せません。
構造として面白いのが、少し漫画のようにコマ割りがあり同じページの中で細かく場面展開があるところ。
クマの細かな様子がわかり、物語に動きが感じられます。
対象年齢は4・5歳からとされていますが、長めの物語なので、自分で読むなら就学後の方が良さそうです。
登場人物
・くま
・人間たち
・動物園のくまたち
・サーカスのくまたち
あらすじ
冬の間、森の洞穴で冬眠していたくま。
春になって目が覚めると、森は跡形もなく消え、そこには工場がありました。
工場をぽかんと見つめていると、工場の職長が「とっとと しごとにつけ」と声をかけに来ました。
驚いたくまが「ぼくは くまなんだけど……」と言うと、怒られて人事課長のところへ連れていかれます。
連れていかれた先の人事課長も副工場長も工場長も誰もぼくがくまだと信じてくれません。
最後に社長のところへ連れていかれ、くまだと証明するために動物園のくまたちやサーカスのくまたちにくまかどうかを聞きに行くことになります。
結局誰にもくまだと信じてもらうことができず、工場に戻ったくまは、作業服を着てヒゲを剃り、人間として工場で働き始めますが ―――。
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このような、お話です。
くまは何も悪くないのに、人間の思い込みや偏った価値観、見下す態度などによって理不尽に振り回され、悲しい思いをしてしまいます。
あまりにも自分の思いが届かなかったくまは、抵抗するのをやめて諦めの境地で言われるがままに人間の世界で生きようとしますが、それにも関わらず人間たちは怒ってきます。
くまの表情が何とも切なく、相手を思いやる気持ちや相手の立場になって考えることができない人間たちの態度には苦しさを感じます。
この物語は、社会生活の中で理不尽な経験をしてきた人はとても共感するのではないでしょうか。
社会の在り方、価値観などを振り返ることができる奥深い絵本です。
最後に
本来、ひとりひとり生き方は千差万別なはずなのに、「こう生きるのが正しい」と周囲からそうあることを求められるものです。
それを受け入れられる人もいますが、自分の本心を抑えて適応しようとする人もいます。
また、苦しくなって周囲の反対を押し切ってでもありのままの自分で生きようとする人もいます。
誰のために生きるのか。
何を思って生きたいのか。
その答えが、その人自身の選択する人生なのでしょう。
現代は過去の時代に比べると個々の自由な選択ができる時代。
それでも、しがらみから抜け出すには勇気と大きな力と自分への責任を持つことが必要になりますが、諦めずに立ち向かっていきたいものですね。
最後までお読みいただきありがとうございます
<ご紹介した絵本はこちら>
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