こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
8月に入ると広島・長崎の平和祈念式典や終戦の日の戦没者追悼式などがあり、戦争と平和について考えることが多くなります。
2024年の今年は戦後79年になるそうで、戦争を経験した人たちから直接お話を聞ける機会はほとんど無くなってきてしまいました。
戦争を知らない私たちが戦争について知るには、歴史の勉強をしたり資料館へ行ったり、映像作品で再現されたものを見たり、当時を知る人が残した書籍や絵などに触れるしかありません。
子どもたちも身近に感じられるものとしては、絵本や児童文学などになりますね。
今回は、平和な夏の砂浜を連想させてくれる星の砂から、戦争について考えられる絵本をご紹介したいと思います。
星砂のぼうや
文:灰谷健次郎
絵:坪谷令子
発行:1993年6月18日 童心社
古い絵本ですが、古さをあまり感じさせない作品です。
ちょっと変わったオノマトペもあり、児童文学作家さんならではの文面の面白さが感じられます。
星砂のぼうやとかあさんの語り合いの中で物語が進んでいきますが、星砂のかあさんの言葉のひとつひとつに考えさせられる瞬間があります。
グッと引き込まれ、何度も読み返してしまう絵本です。
登場人物
・星砂のぼうや
・星砂のかあさん
<その他>
・魚たち
・人間の子どもたち
あらすじ
ホンダワラ(海藻)に乗って沖縄の海を漂う星砂のぼうやとかあさん。
星砂のぼうやは「どこまでいくの?」とホンダワラに聞くけれど、
「むあああーん」と言うだけ。
不満げな星砂のぼうや。
お友達の魚たちを次々と思い出し、一緒に遊びたいな、あれもしたい、これもしたいと訴える星砂のぼうやは、頭の中はお友達のことでいっぱい。
星砂のかあさんは「おまえは友だちがおおくて、しあわせだね」と答える。
突然大きな波が来て、大きく揺れる。
白い砂浜が見えて、あそこへ行くとお家に帰れないのでは、と心配になる星砂のぼうやに、星砂のかあさんは「心配しないで、ここは静かな湾だから」と落ち着いた様子で答え、少し眠るように言う。
星砂のぼうやが目覚めると、「エイサ、エイサ、エイサ」という掛け声が聞こえてくる。
人間の子どもたちがカヌーを漕いでいる声だった。
こうして子どもたちが元気にカヌーを漕げるのは、平和だからと星砂のかあさんは教えてくれる。
「ヘイワって、なに?」
「じぶんのことに むちゅうになることよ」
次に星砂のぼうやが見つけたのは島の子。
サバニ(沖縄の船)のそばでおじいさんと一緒にいる。
サバニにサメの油を塗りながら、何やら話している。
「こいつは、おまえにゆずるさァ」
「ほんとうは、じいちゃんが おまえのとうさんにゆずって、おまえはとうさんから こいつをゆずってもらうのが、いちばんよかったんだ」
そんな話が聞こえてくる。
その子は「まだ、どこかで戦争してる?」とおじいさんに尋ねる。
「………………」
二人の声は波の音で聴き取れなくなった。
「センソウって、なに?」
「人が たくさん死ぬことだよ」
そう答える星砂のかあさん。
「こんなうつくしい海に、鉄のふねが いっぱいやってきて、あかい火の玉を 島じゅうにふらしたの」
「みどりのなくなった島に、なん日もなん日も雨がふって、あかい水が 海へ流れてきたわ」
悲しそうに話す星砂のかあさん。
星砂の仲間は日光やきれいな海があるところじゃないと生きていけない。
たくさんの星砂の仲間も戦争で死んでしまったと星砂のぼうやに教える。
次の日の朝、砂浜に人間の子どもたちが集まる姿が見えた。
砂に手を押し付けて「星砂みつけたァ」と楽しそうに声を上げる姿をみて、星砂のぼうやとかあさんは目を合わせて嬉しそうに笑った。
最後に
平和であることが当たり前になると、ちょっとしたことで不満を感じてしまうことがあります。
しかし、そんな不満が言えるのも平和だからこそ。
かつての戦争で、たくさんの命が奪われ、環境が破壊され、悲しみに満ちた時代がありました。
その時に生き延びた人々が平和を願い、復興と発展に尽力してくれたからこそ、今の私たちの平和と幸せがあります。
幸せの象徴である星砂。
星砂は平和な場所、自然環境が整った場所だからこそ生まれるもの。
この絵本はそんな幸せの象徴から戦争を学べる絵本です。
今ある平和を丁寧に感じるために、是非お手に取ってみてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございます
<ご紹介した絵本はこちら>
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