ぐろーいんぐあっぷ!

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~自分の心・相手の心を理解して笑顔あふれる毎日を~ 心理カウンセラー松田ちかこのofficialブログ

小説【かがみの孤城】

 

こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。

 

4月に入り、子どもたちは新しい学年に上がり、新学期を迎えましたね。

新しい環境は期待と希望に満ち溢れ、ワクワクします。

しかし一方で、不安やプレッシャーを感じることも多いですね。

 

多感な思春期では、こうした不安やプレッシャーを処理しきれず自信を無くしてしまったり、お友達とのやりとりがうまくいかず心を開けなくなってしまったり、学校で居心地の悪い思いをしてしまうことがあります。

 

今回ご紹介する本は、そんな苦しみを抱えた中学生たちが経験した不思議な世界での物語。

本屋大賞に選ばれたり、アニメで映画化されたりもしたので、ご存知の方も多いと思いますが、今の時期こそ改めてご紹介することで何かの助けになるかもしれません。

少しでも、必要とする方の元へ届きますように。

 

 

 

 

 

かがみの孤城(THE  SOLITARY CASTLE  IN THE  MIRROR)

辻村深月さんによる小説で、本屋大賞を受賞。2022年には劇場アニメが公開されています。

著者の辻村深月さんは『ツナグ』『鍵のない夢を見る』『朝が来る』などのヒット作を書かれており、最近では『傲慢と善良』の映画化が決まっています。

 

著者:辻村深月

発行:2017年 ポプラ社

装幀:岡本歌織

装画:禅之助

 

厚みのある本ですが、とても読みやすく、夢中になって読んでしまいます。

また、児童文庫版(上下巻)もあるので、読みやすい方を選ぶことができます。

 


かがみの孤城

 

<児童文庫版>


かがみの孤城 上 (ポプラ文庫)


かがみの孤城 下 (ポプラ文庫)

登場人物

<主人公>

こころ/安西こころ(あんざいこころ)【中1・女子】

<城のメンバー>

リオン/水守理音(みずもりりおん)【中1・男子】

アキ/井上晶子(いのうえあきこ)【中3・女子】

スバル/長久昴(ながひさすばる)【中3・男子】

マサムネ/政宗青澄(まさむねあーす)【中2・男子】

フウカ/長谷川風歌(はせがわふうか)【中2・女子】

ウレシノ/嬉野遥(うれしのはるか)【中1・男子】

オオカミサマ(城の案内人・狼の仮面をつけた少女)

<その他>

こころの母

伊田先生(こころの中学校の担任)

東条 萌(こころの中学校での唯一の友達)

真田 美織(こころの同級生で不登校に追い込んだ張本人)

喜多嶋先生(こころのフリースクールの先生)

ミオ/水守実生(リオンの7歳年上の姉・13歳で病死)

 

当初の登場人物の情報はこのようになっていますが、現実世界とのつながりがわかってくると、それぞれの意外なつながりが見えてきますよ。

 

あらすじ

中学1年生のこころは、ある事がきっかけで学校に行けなくなる。

そのことを誰にも話せず、お母さんが手配してくれたフリースクールも体調不良を理由に休む。こころのそんな様子にお母さんは不機嫌な態度をとる。

フリースクール「心の教室」には最初の面談だけ行き、喜多嶋先生という若い女の先生と出会う。こころがその後フリースクールにも通えない中、お母さんと連絡を取り合い大事な場面で必ず来てくれる優しい先生。こころも次第に信頼を置くようになる。

一方、学校の担任の伊田先生は若くて気さくな男の先生だが、こころは信頼できない。こころが休み始めていた頃は、よく家に訪ねてきてくれていたが、こころに寄り添ってくれるわけではなく、一方的で話をわかってくれない先生。

転校生の東条萌ちゃんは、家がすぐ近くということもあって仲良くなったが、クラスメイトの真田美織によって引き離されてしまう。こころはこの真田美織に一方的に攻撃され、何度も嫌な思いをしてきた。

 

こうした状況の中、学校にもフリースクールにも通えずに家に引きこもってしまっているこころだったが、5月のある日、部屋の姿見が光り、その中に吸い込まれる。

吸い込まれた先にいたのは、狼のお面を被った少女「オオカミさま」。

その子は「あなたは、めでたくこの城のゲストに招かれましたー!」と言う。そこには西洋の童話で見るような立派な門構えの城が。

こころは驚き、その日は逃げ出すものの、翌朝また鏡が光ったのでもう一度その中に入った。

城の中にはまた「オオカミさま」がいて、他にもこころと歳の近い人たちが6人。

オオカミさまは、こころを含めた7人で「願いの鍵」と「願いの部屋」を探し、誰かの願いを1つだけ叶えてくれると説明し、3月30日でこの城は閉じること、日本時間の午前9時から午後5時の間だけ開き、門限を破ったらオオカミに食われるというルールを伝える。

 

城のメンバーとして出会ったのは、中学生のリオン、フウカ、スバル、マサムネ、ウレシノ、アキ。各々で鍵を探しつつ、次第に打ち解け合っていく。

 

 

 

ある日、ウレシノが「学校に行く」と宣言する。それを機に、薄々は感じていたもののそれぞれが口にはしてこなかった不登校の問題を互いに知ることになる。しかし、リオンだけは、ハワイの学校にサッカー留学をしていて学校には通っていることもわかる。

ウレシノは学校に行ったもののクラスメイトと喧嘩をし、怪我をして帰ってくる。

親や学校の先生は大騒ぎしたが、フリースクールの先生だけが「ウレシノ君は、今、一番どうしたい?」と寄り添ってくれたと語り、城のメンバーはウレシノの率直な話をただ受け止める。

 

またあるときは、アキが制服を着たまま城にやってきたことで、リオンを除く城のメンバーが同じ東京の南東京市にある雪科第五中の生徒であることを知る。ハワイの学校に通うリオンも、本当は雪科第五中に行く予定だったことも判明する。

教えあった互いのクラスは次のとおりだった。

・こころ  1年4組

・ウレシノ 1年1組

・フウカ  2年3組

・マサムネ 2年6組

・スバル  3年3組

・アキ   3年5組

お互いに助け合えるんじゃないかという考えのもと「保健室や図書室でいいから、同じ日に学校に登校してくれないか」とマサムネが提案する。それぞれが勇気を出して登校するが、なぜか会えなかった。

先生や他の生徒に聞いても「そんな名前の生徒はないない」と言われる始末。

互いに困惑しながら城に再び集まるが、みんな約束通り登校したと言う。

 

なぜ会えなかったのか、マサムネがそれぞれがパラレルワールドの住人同士なのではないか、外で会い助け合うことはできないのではないかと推理する。しかし、オオカミさまは「全然、違う」とあっさり首を振る。「外で会えないとも、助け合えないとも言っていない」「最初からヒントをずっと出している」と。

そこでリオンが自分の部屋(城のメンバーは各自部屋を与えられている)のベッドの裏に「✖️印」を見つけたことを話すと、他のメンバーも“机の下" “お風呂” “暖炉の中” “台所の戸棚の中”にもあったと言う。それもヒントなのかと尋ねると、オオカミさまは「判断はまかせる」と答えた。

それぞれに違う現実があること、✖️印やオオカミさまの言葉に隠れているヒントを考えるも答えには辿り着けず、3月30日の期限が近づく。“鍵”も“願いの部屋”もみんながどこか諦めていた。

 

最後の日は、みんなでパーティをしようと約束をし、こころもお菓子を用意して準備をしていた。

しかし約束の日の前日、アキが午後5時になっても家に帰らずルールを破ってしまい・・・

 

 

ここから話は急展開を迎えます。

城のメンバー7人とオオカミさまの意外な関係が明らかになり、それぞれの現実世界と繋がっていく。

喜多嶋先生の正体とみんなのその後。

とても心温まるラストです。

 

ぜひ本を手に取って読んでみてくださいね。

こんな人にオススメ

学校での対人関係に悩むことが多い中高生の方にオススメです。

不登校の当事者の方はきっと力をもらえると思いますし、お友達が不登校になってしまったという方には自分の無力感を受け止めてもらう感覚やお友達の気持ちを理解するキッカケをもらえるのではないかと思います。

また、不登校の問題に対応している先生や保護者さんも、子どもの気持ちを理解するのにすごく参考になると思います。

 

小説版のほかに児童文庫版もあるため、小学3年生くらいからも楽しめると思います。

また、2022年に上映された映画「かがみの孤城」がAmazonプライムビデオで見ることができますので(2024年4月現在)、本を読む前に映画で楽しむのもいいかもしれません。

プライム会員の方はprime期間中にぜひ!

Prime Video

 

映画『かがみの孤城』公式サイト

最後に

文部科学省が発表した令和4年度の不登校の調査結果では、不登校児童生徒数は10年連続で増加しており過去最多を更新しているという結果が得られ、その数は全国でおよそ29万9千人(小中学生)にも上るそうです。

令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

不登校の理由は人それぞれ。

この小説のように、お友達関係に悩んで投稿できない子もいますし、限局性学習症や発達性協調運動障害などによって学校の授業に苦痛を感じている子、感覚過敏で光や音、人からの視線などが気になって登校するだけで疲れてしまう子、先生が怖くなって不安から登校できない子など、自分ではどうすることもできない苦痛を抱えている子がいます。

 

合理的配慮、環境構成、教員の適切な関わり、対人関係の援助、ICTの活用・・・

集団教育のあり方や学校の物理的な環境のあり方を今一度見直す時なのではないかと思います。

予算や人員の確保・教育に大きな費用がかかる事だと思います。しかし、これから社会を担っていく子どもたちには、優先的に費用と労力をかけることが必要なのではないでしょうか。

 

傷つく子どもたちをこれ以上増やさない社会を作っていきたいものですね。

 

この本を読んで、少しでも多くの子どもたちが救われますように。

そして、少しでも多くの大人が子どもたちのことを慮ってもらえるようになれば良いなと思います。

 

 

▽ご紹介した本はこちら

 

<参考>

令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

 

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