こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
神経発達症(発達障害)のお子さんへの関わりは特性によって、関わり方が難しいと感じる場合も少なくありません。
どうしたら、良い関係が築けるかな。
何を求めてるんだろう。
多くの人がこんな悩みを持ちながら、子育てや支援を行っているのが現状だと思います。
今回は、発達障害支援や子育てのための関わり方の基本原則をご紹介します。
SPELLとは
SPELLとは、英国自閉症協会(National Autistic Society)が提唱している、ASD児(自閉スペクトラム症の子ども)への支援の基本原則です。
Structure(構造)Positive(肯定的に)Empathy(共感)Low Arousal(穏やかな対応)Links(繋がり)の5つの頭文字で構成されています。
Structure(構造)
子どもにとって見通しがあること、理解できること、安心できる環境であることを重視します。
こうした環境を作ることを「構造化」といい、先を予測できない不安の中にいるASDのお子さんが、これから何があるのかハッキリと理解でき、安心できるようにします。
<ポイント>
・情報をわかりやすく示す
・「何を・いつ・どれくらい」
・文字やイラスト、写真を使って、視覚的にわかりやすく
Positive(肯定的に)
肯定的な雰囲気や接し方を大切にします。
無理な要求や課題設定をすること、高圧的・威圧的な態度はとらないことを意識します。
ASD児は不安感を持ちやすく、威圧的な態度で不安や緊張を高めると本来持っている力を発揮しづらくなってしまいます。
しかし、だからと言って全て受容するわけではなく、許容し難い言動に対し、穏やかに論理的に説明し、なぜそのような言動をしてしまったのか、背景にある問題に目を向け、環境調整をします。
<ポイント>
・自己肯定感を高める
・罰ではなく「ほめる」関わり
・「走らない」ではなく「歩きましょう」という肯定的な具体的な声掛け
Empathy(共感)
ASD児が感じる苦痛や楽しみに共感し、必要に応じて具体的なサポートを一緒に考えます。
どう感じ、どう考え、どう行動するのかを理解することから始めましょう。
ストレスや苦痛に慣れさせる、乗り越えさせるという考え方は、結果的に本人を追い詰め、社会的な場面での不適応につながる一因となり得ます。
<ポイント>
・本人の目線で支援する
Low Arousal(穏やかな対応)
穏やかな声のトーン、表情、態度で接することが重要です。
大声で圧迫するような態度をとったり、厳しく指導したりすると、その場では指示に従い問題が解決したように見えることがありますが、支援者や親に対する恐怖心から従っているのみで、理解しているわけではないのです。
共感しながら、困難や苦痛を減らす工夫を一緒に考えましょう。
本人だけでなく、周囲の人も穏やかに過ごせることを目指して支援していくことが大切です。
<ポイント>
・低刺激な環境づくり
Links(繋がり)
一人で抱え込まず、家庭・学校・地域・医療・福祉などが協力しながら、本人を中心に一貫性のあるサポートをしていくことです。
「孤立させないこと」だけに限らず、生活のさまざまな場面で特性への配慮がなされ、支援の連続性や一貫性が社会全体を通して繋がり、維持・促進されることも重要な要素となります。
ASDの人が不安を感じることなく社会参加していけるよう、生涯にわたって特性に配慮した支援が受けられる体制を作っていく必要があります。
<ポイント>
・一貫性のあるサポートをチームで
魔法のことば
「SPELL」には「魔法」という意味があります。
SPELLを意識した関わりを行うことで、本人や家族や支援者などの周囲の人の困りごとやしんどさを軽減し、明るく前向きに生きていけるようになる。
そんな魔法をかけてくれる、「SPELL」は魔法のことばなのかもしれませんね。
最後に
子どものためを思うと、つい叱ってしまいたくなりますよね。
しかし、もともと持っているものを十分に活かし、成長を促していくためには「丁寧な関わり」が必要になります。
気持ちを整え、子どもの立場に立って、どんな環境や関わりが適しているだろうか、と考えることは面倒だと思うかもしれません。
でも、ここでひと手間かけることで、将来が大きく変わるんです。
ひと手間かけることから逃げて、関係が崩れてしまった親子や先生と生徒をたくさん見てきました。
関係が崩れてしまってから修復しようと思うと、相当な時間と気力と体力が必要になります。
それなら今、ほんの少しだけ手間をかける。
そんな関わりができる人が増えてくれることを心から願っています。
悲しい思いをする子どもや大人がこれ以上増えないように・・・
<参考>
最後までお読みいただきありがとうございます
▽最新情報・豆知識をチェック
▽また読みたいな
▽こちらも合わせてお読みいただけると嬉しいです
▽著書