こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
空想をするというのは、心を自由にすること。
想像力が豊かであれば、創造力や表現力も豊かになります。
そんな空想にどっぷり浸かれるのは、なんといっても物語ですね!
児童文学は子どもはもちろん、大人も色々なことを考えさせられ、楽しめる文学です。
純粋な想像力を思い出し、素直にその世界に入り込む。
そんな時間が、人を豊かにしてくれるものです。
読書の秋。
大人も子どももこんなお話の世界に誘われてみてはいかがでしょうか。
ドアのむこうの国へのパスポート
まずはじめに、この幻想的な色合いの表紙に引き込まれます。
作者:トンケ・ドラフト
リンデルト・クロムハウト
絵 :リンデ・ファース
訳者:西村 由美
出版:2023年4月27日 岩波書店
登場人物
<主人公>
ラウレンゾー(ママと二人暮らし、パパは離婚しイタリアへ)
<マックス・ベルジュイス小学校>
トム・ヴィット先生
(クラスメイト)
ロベルト
イーゴル
テヤ
フランス
メ―リー
イドゥナ
ヨリス
バルト
<学校の外で出会う人たち>
渡し守
(トム先生が読んでくれる本の作家)
ラヴィニア・アケノミョージョ(中表紙に「ラヴィニア・アケノミョージョ役・・・トンケ・ドラフト」との記載が)
(アケノミョージョの黒猫)
イワン・オソロシ
あらすじ
時は、新しい学年が始まったばかりの9月(日本とは違い9月に新学期が始まります)。
みんな今までの小学校では居心地が悪く、この小学校に転校してきた子どもばかり。
落ち着きのなさ、不注意、コミュニケーションの難しさ、偏った考え方、情動の不安定さなどを抱えている様子。
そんなマックス・ベルジュイス小学校の子どもたちをまとめるのはトム先生。
トム先生はいつも本を読んでくれます。
騒がしい子どもたちも、トム先生が本を読むときは静かにしています。
ある日、先生のお気に入りの作家、ラヴィニア・アケノミョージョにみんなで手紙を書こうという話になります。子どもたちはおのおの質問や絵を書いて、それを一つの封筒にまとめて送りました。
そうすると、ラヴィニア・アケノミョージョからクラスの中で二人だけ自宅にいらっしゃい、と返事が。
そこで、先生が選んだのはラウレンゾーとテヤの二人。
アケノミョージョの家へ向かう途中、川を渡るために小さな船に乗り、その船で何やら不思議な老人の渡し守と出会います。
アケノミョージョの家に着くと、窓には黒猫が。二人をアケノミョージョが出迎え、紅茶を飲みながら質問に答えます。
そこで「コスモポリタン連邦に続く部屋」についての話を聞くラウレンゾーとテヤ。
さらにそこへ行くにはパスポートとビザが必要という話やそれを発行するのは大使であること、アケノミョージョは発行に関与できないことが語られます。
翌朝二人は学校でみんなにそのことを報告します。
みんなはドアのむこうの国「コスモポリタン連邦」に興味津々。
アケノミョージョを介して、パスポートの申請やビザの発行手続きにみんなで取り組みます。クラスみんなであれやこれやと言いながら、・・・
そんな中で出てくる色々な謎が彼らをまた困惑させます。
許可が下りるかわからない緊張感を味わいながら、子どもたちの冒険が始まります。
彼らは「コスモポリタン連邦」に辿り着くことができるのでしょうか・・・?
そして、大使は誰なのか、あの扉は何なのか、なぞなぞや渡し守の言葉の謎は解けるのでしょうか・・・?
この冒険に立ち向かう中で、子どもたちは何を学んでいくのでしょうか・・・?
おとぎ話のようでリアリティも感じる現代版の冒険物語です。
冒険の続きは是非実際に読んで確かめてみてください。
最後に
ちょっぴり不思議な登場人物たちの温かな愛にあふれた物語。
大人たち一人ひとりの言葉に深みがあり、凝り固まった現代人の考えを和らげてくれます。
特に私が印象に残っているのは渡し守(意外なキーパーソン)の言葉。
「近ごろ、人はみんないそいでいるからな」
「自分のまわりを見ないから、世の中のことに関心がうすい。きわめてざんねんだ」
渡し船に乗りに来たラウレンゾーに「いそいでいるのかい?」と尋ね、「いそいでいるって?」と聞き返したときに渡し守が言った言葉なのですが、私の好きな『モモ』という児童文学にも通じるものがあるなぁとこの一言から考えさせられました。
また、この物語を発達特性のある子どもたちの様子や受けてきた悲しみ、それを支える大人たちという視点で読んでみても面白いと思います。
お子さんに読み聞かせをしてコミュニケーションをとったり、子どもの世界を思い出すために大人自身が読んでみたり。楽しみ方は人それそれ。
読書の秋の一冊にいかがでしょうか?
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