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沈黙の螺旋

 

こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。

 

沈黙の螺旋理論」という言葉をご存知でしょうか。

近頃では、コロナ問題、オリンピック問題など、世論は大きなうねりを見せています。

 

コロナ問題では、事あるごとに賛否が沸き起こり、今はワクチンの是非で世論が分かれていますよね。

さらに、今回のオリンピック・パラリンピックについても、開催の賛否が問われました。しかし、開催直前まで中止を訴えていた人も、開催後にはしれっと応援していますよね。まだまだ根強く反対意見を訴える方もいますが、なかなか発言しづらい状況になっています。

 

人の意見の移り変わりとは不思議なものです。

このように、世論が多数派・少数派に分かれると少数派の人が発言しづらくなり、多数派の意見がより勢いを増すのはなぜでしょうか。

今回は「沈黙の螺旋(らせん)」というキーワードから紐解いていきたいと思います。

 

 

 

沈黙の螺旋とは

沈黙の螺旋とは、ドイツの政治学者ノエル=ノイマン(Noelle Neumann,E.)が著書「沈黙の螺旋理論」の中で提唱する世論現象のことです。

 

マスメディアを通じて、個人が多数派と認識する世論が形成され、同調を求める社会的圧力によって少数派が沈黙を余儀なくされていく過程を示したものです。

 

ノエル=ノイマンは、ドイツの選挙において人々の投票行動が土壇場で変化するという出来事をきっかけに、「沈黙の螺旋仮説」を提唱しました。

 

孤立への恐怖

人は社会的動物と言われています。どんな人も常に他者との関係があって存在していますよね。

社会を形成して生活する動物であるため、社会と切り離された環境で生きていくことは困難です。孤立すると生命の危機に晒されるため、人は本能的に孤立を恐れます。

 

社会心理学者のソロモン=アッシュの同調実験というものがありますが、この実験でも、人は明らかに間違っている意見であっても多数派の意見に同調する傾向があるという結果が出ており、この実験結果からも人は孤立を恐れるということが分かります。

こちらの記事もチェック!『ソロモンアッシュの同調実験』 - ぐろーいんぐあっぷ!

 

そして、この孤立への恐怖こそが ”沈黙の螺旋を指導させる力であるように思われる” とノエル=ノイマンは考えました。

また、人には準統計的能力という意見風土(賛成・反対などの意見の頻度分布)を認知する能力があり、自分の意見が多数派か少数派かを判断し、孤立を回避しようとしているともいいました。

 

多数派に流れやすい傾向がある人は、「自分には知人がほとんどいない」と相対的に孤立した人や自分に自信がなく争点に関して関心の低い人ということもわかっており、世論の動きはそうした人たちによって大きく変動するのだと言えます。

 

【争点(そうてん)】
論争など争いの的になっている重要な点

沈黙の螺旋理論

人には孤立への恐怖と準統計的能力があるということを前提にこの理論は展開されます。

ある意見の対立がある場合、多数派と認知された方は意見に自信を持ち、少数派と認知された方は意見することで孤立することを恐れ、沈黙するようになります。

これは実際の意見分布とは別に、人の認知が多数派/少数派と判断することで起こります。

マスメディアはこの「認知」に大きな影響を与えており、マスメディアが報じることで、さらに多数派の意見が無根拠に大きくなり、少数派はより一層沈黙するというループが繰り返され、世論の収斂が起こるのです。

 

この理論を証明すべく、ノイマンが責任者を務めたアレンスバッハ研究所の調査で行った質問紙調査で「列車テスト」と呼ばれる項目が作られ、質問した争点について回答者が発言したがるか沈黙したがるかが測定されました。

「列車テスト」ではまず ”「あなたは列車に乗って5時間の旅をしていると想像して下さい。あなたのコンパートメントにはある人が乗っていてこんな意見を持っていたと考えてください…」” と長距離列車に乗り、たまたま同じコンパートメントに同席した見ず知らずの人と話している状況を設定します。そして、その相手がある争点に対して自分とは反対意見を持つ人だった場合に自分の意見を発言したいか、その必要はないと考えるかと尋ね、その結果を測定します。

このテストを様々な争点に対して繰り返し実施してみたことで、質問した争点上の立場に応じて、回答者が発信したがるか沈黙したがるかが測定可能であることが明らかになりました。そして、多数派に属する人は「発言する」と答えた人が、少数派に属する人は「話す必要はない」と答えた人がそれぞれ多くなる、という結果を得たことでこの理論を明らかなものとしました。

 

【コンパートメント】
列車の区分客室のこと

 

しかし、人が持つという準統計的能力が本当に列車テストで設定された匿名の他者の意見を認知しているのか、家族や友人などの準拠集団からくるのではないか、という論点もあり、必ずしも正確ではないと言われています。

孤立への恐怖についても、同調傾向が生じるのは全員一致の多数派のみであり、一人でも異なる意見の持ち主がいれば、多数派は同調への圧力を持たなくなるとも言われています。

 

このように論点が残る部分はあるものの「人々は多数派となる方向につきやすい」という傾向はあり、ある争点について論争がある中で何を信頼し自分はどの立場に立つべきか判断できないという曖昧な状況下では特に沈黙の螺旋は生じやすいと考えられています。

 

インターネット上における沈黙の螺旋

SNSの普及に伴い、個人が自由に発言できる機会が増えました。

反対意見の回避を可能にするエゴ・メディアであるSNS。少数派であっても孤立せず自由に意見の主張ができるこの環境の中で沈黙の螺旋は起こるのでしょうか。

Twitterにおける意見の多数派認知とパーソナルネットワークの同質性が発言に与える影響

この論文における実験で、オリジナルツイートやメンションにおいては、多数派認知・同質性の関連は見られないものの、リツイートにおいては多数派認知・フレンドとの意見の同質性が発言にプラスの影響を与えていることがわかりました。これによって、多様な意見の発信が求められるものの、多数派であると認識する人々によって一方の意見が拡散しやすくなり、沈黙の螺旋理論が述べる多数派の意見への一極集中化が起こりうる可能性があるという結果が示されました。

 

ただしこれは、SNSアルゴリズムが形成する比較的意見が近接する人とのコミュニティの中で生ずるものです。発信者が感じる「多数派」であるという認識が、世の中全体においての「多数派」かどうかは別の話で、個人化された情報環境の中で分極的に沈黙の螺旋が起きているものと考えられます。

 

悪魔の代弁者

ノイマン沈黙の螺旋を克服するには、「悪魔の代弁者」と言われる多数派にあえて反対する意見を言う人を用意することが重要だといいます。

少数派の意見が出しづらい環境では、議論が機能しなくなり、多角的な視点が持てず、建設的な議論ができません。

こうした立場の人がいることで、多数派に気兼ねすることなく自由に発想・意見でき、議論に深みが出ることで、より高い生産性が期待できるようになります。

 

最後に

人のこうした心の動きは、世の中を渡り歩き生き抜いていくために必要な能力。

多数派意見に同調することも決して悪いことではなく、仲間との良好な関係を作り、社会的にうまく生活していくために必要なことでもあります。

しかし、何も考えず多数派意見に流されるのではなく、本当に正しい答えや本当に適することが何なのかを常に問い、多角的な視点で世の中を見ることは必要なのではないでしょうか。

多様な社会を生きていく私たち。

人の考えも多種多様。必ず同意見の人はいるものだし、完全に孤立することは逆に難しい。だからこそ「自分はどう考えるのか」を素直に感じ、その感覚を大切にしながら、他者の意見も多角的に捉え尊重し、柔軟に世の中を渡り歩いていきたいものですね。

 

 

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<参考>

沈黙の螺旋理論[改訂復刻版]: 世論形成過程の社会心理学

沈黙の螺旋理論―世論形成過程の社会心理学

Twitterにおける意見の多数派認知とパーソナルネットワークの同質性が発言に与える影響

Twitterにおける個人の情報発信と態度変容の要因に関する研究