こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
11月は児童虐待防止推進月間です。
虐待について理解を深め、自分を振り返り、予防していくためにどうすればいいのかを考えてみる。
そんな機会にしてもらえればと思います。
今回は虐待の中でも、育児放棄(ネグレクト)について少しお話をしたいと思います。
育児放棄(ネグレクト)とは
心身の発達を損なうほどの不適切な養育や子どもへの安全への配慮がなされていない行為を行うことが育児放棄(ネグレクト)です。
具体的な例を挙げると、
- 食事を与えない
- ひどく不潔にする
- 家に閉じ込める
- 自動車の中に放置する
- 重い病気になっても病院に連れて行かない
といったことがネグレクトにあたります。
虐待の実態
私は今までに仕事を通して、悲しい背景、壮絶な経験をした子どもたちと出会うことが多くありました。特異な事情を抱える子に心を痛めることも少なくありませんでした。
大人であってもトラウマを抱えてしまうような人の生死に関わる壮絶な出来事を体験した子。
どんな思いでそのショックな出来事に向き合ったのか、それを想像するだけで胸が張り裂けそうです。
子どもを置いてどこかに行ってしまった親や親自身もセルフネグレクトで起き上がれず、子どもも無気力に何もできずにいたケースもあります。
もし見つけてもらえていなかったら、どうなっていたのだろう・・・そう思うと、とても怖くもなりました。
ネグレクトを受けた子どもの中には、園や学校に行かせてもらえていない子もいます。
社会的な場所に行くことができれば、子どもの異変やSOSに気付ける大人に出会える可能性が高まりますのでそれだけでも救いになります。
園や学校関係の方は、お休みが続いている子の現状把握を積極的に行う。保護者からの拒否などもあり難しい場合もあると思いますが、そんなケースこそ注意深く状況を把握することで虐待予防につながると思います。
外に出ることができない子の場合、ずっと座ったままあまり動かない生活をしていて、足腰が固くなり歩行がツラくなる子もいます。
また、生活に必要な技術(お風呂の入り方など)を教えてもらっていない子も多いですし、助けを呼ぶことを考えつかない子もいます。
お家の中にいて刺激が少ないからか「知的に遅れがあるのかな?」と感じる子も多いです。先天的なものか、経験不足なのか、両方なのか。医師ではないので判断することはできませんが、関わる中で違和感があったのは確かです。
ただ、人との関りや生活体験、学習といった刺激を受けるようになると、すごく成長を感じられる子もいました。
こうした子どもの姿を見ると、やはり与えられる環境によって子どもの発達は影響を受けるのだな、と改めて感じます。
ネグレクトというのは生死に関わる問題に直結しますので、「もしかしたら」と思う子がいれば迷わず通報してもらいたいです。
脳の発達への影響
ネグレクトに限らず、虐待は子どもの脳の発達にも悪影響を及ぼします。
虐待を受けた場合、脳が損傷したり神経が過剰に形成されたりすることがわかっています。
虐待を受けることで、自己肯定ができず、自信のなさや無気力、自傷他害、摂食障害、依存症(酒・たばこ・薬物・性)、精神不安定、オーバードーズ(薬剤の大量摂取)など問題が生じるようになります。
また、愛着関係がうまく築けず、人との距離感がうまくつかめないことから拒絶感が強くなったり、逆に過度にべたべた甘えたりします。感情のコントロールができず、暴力や暴言で人をコントロールしようとします。
児童虐待の相談件数
2023年9月に こども家庭庁より、児童虐待相談対応件数の2022年度の速報値が『219,170件』と発表されましたが、今年も前年に引き続き増加しています。
これは純粋に虐待件数が増えているというよりも、社会の意識が変わり虐待を見過ごさない人が増えているという側面があると言われています。
実際に警察が積極的に通告するようになっていることからもそれがわかります。
とはいえ、21万件を超える虐待相談があるというのが現実です。
多くの子どもたちが虐待を受け苦しんでいます。
苦しんでいる子どもの存在をいかに見過ごさないようにするかを私たちは考えなければなりません。
保護者の気持ちを考える
虐待の問題は、子どもを守ること・虐待を行った人への批判に焦点を当てられがちですが、根本的に虐待を減らしていこうと考えるのならもっと視野を広げなければなりません。
虐待を行ってしまう人は極悪人のように思うかもしれません。
"力の弱い子どもに対して何てことをするのか"と。
しかし、どんな保護者も子どもを思うものです。
最初は一生懸命に子育てを行い、分からないことも分からないなりに調べて必死で向き合っているはずです。
しかし、子育ては生半可なものではないのも事実。
うまくいかない、子どもが言うことを聞かず泣き叫ぶ、どうしたら良いのかわからない・・・
子どもにハンディキャップがあったり、親自身にハンディキャップがあったり、仕事のストレスがあったり、経済的な問題があったり、孤立していたり、といった背景を抱えていると尚更です。
そのツラさのはけ口がなく対処方法もわからなければ、子どもにそれをぶつけてしまったり、逃げ出してしまいたくなったりするのも想像にたやすいですよね。
そんな保護者の気持ちを理解することも、虐待予防には必要なのです。
そして、困っているのではないかと思ったら、孤立しないように少しずつ関係作りをして話を聞いてあげられる関係になったり、相談機関や子育てをサポートしてくれる機関の紹介をしたり、力になってあげてもらいたいです。
誰かの力があるから乗り越えていけることもたくさんあります。
子どもは社会的養護を受けることができますが、保護者のサポートは十分になされていないのが現状です。
見ないふりをするのではなく、力を貸してあげる。
そんな意識が虐待を予防することにも繋がるものなのだと思います。
最後に
児童虐待というものは、目を背けたくなるものだと思います。
しかし、たくさんの親子が助けを求めている現実を少しでも知り、ご自身ができることを考えてみてもらいたいと思います。
まずは、虐待に気付いたら『189(イチハヤク)』に電話をし、児童相談所への通報をためらわないことから始めてください。
よほどのケースでなければニュースで取り上げられない虐待。ニュースで取り上げられても、あまりにもセンシティブなのでその実情は具体的には報道されにくいものです。
それゆえ、対岸の火事のように考えてしまうかもしれませんが、虐待は意外と身近なところで起きているものです。
もしかしたら・・・
その気付きが命を救うことに繋がります。
虐待防止推進月間を機に、虐待について一度考えてみませんか。
▽こども家庭庁の児童虐待防止対策
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