こんにちは!心理カウンセラーの松田ちかこです。
話し合いをしたくても、「言うことを聞いていればいいんだ」と一方的な意見を押し付けられ、話し合いにならない相手っていますよね。
・長時間にわたってお説教をする
・こちらが何か言葉を発しようものなら拍車がかかり、お説教という名の独演会は延長に延長を重ねる
・話している内容は、あたかも正論かのような話しぶりだが矛盾だらけ
・何の根拠も情報元も定かではなく、論理的な説明ではない
・感情的に大きな声で罵声を浴びせる
こうした人は結構身近に現れたりしませんか?
いわゆる、モラルハラスメント。
こちらも「自分が悪いのかな?」とだんだん流されてしまい、洗脳されていくようになります。
抵抗するのは疲れるし、抵抗したってどうせ嫌な思いするだけ。
こうした状況をどう切り抜けていけば良いのかをいくつかご紹介したいと思います。
①「あなたは間違っていない」ということを忘れない
まずは、あなた自身を信じることから始めてください。
相手が明らかに間違った考え方をしていたとしても、毎日のように聞かされているとだんだんその考えが正しいのではないかと思うようになってしまいます。
ストックホルム症候群という現象をご存知のでしょうか。
誘拐や監禁事件の被害者が犯人に対して心理的な繋がりを築くようになる(好意的な感情を持つ)という現象のことで、一緒に過ごす中で共感するようになっていくというものです。
誘拐や監禁のような極限状態ではないにせよ、強い言葉で日常的にお説教を受けていたら、相手の考えに感化されていくものです。
同じ空間の中で過ごす人の考えや感情は伝播しやすいですし、その環境の中にいることでかなりの影響を受けていることを自覚しておいてください。
「自分の素直な感覚(直感)を忘れない」
これを信じるところからスタートしましょう。
②相手を変えることはできないと理解する
どんな人でもそうですが、やはり相手を自分の思い通りに変えることはできません。
それぞれに意思があり、自分の行動は自分で決めたいという欲求があります。
本人が納得しない限り行動や考えは変わらないものです。あなた自身もそうではありませんか?
相手を思い通りに変えようと思うというのは、あなた自身に他者をコントロールしたいというエゴがあるから。
そのエネルギーは自分の変化のために使ってあげるようにしてください。
変わらない相手に向けてもエネルギーの無駄遣いになってしまいますよ。
特に、話し合いにならない人というのは、自分の欲求や意思に囚われているタイプの人なので、余程のことがない限り変わりません。
余程のことがあったとしても、人のせいにして自己変容から目を背けてしまうことも少なくありません。
「いつか、わかってくれる」
と期待して一生懸命に説得しようとするのは、残念ながら骨折り損のくたびれ儲けです。
苦しいことかもしれませんが、相手は変わらないという現実を受け入れてみてくださいね。
③何を言われても反応しない
話し合いにならない人というのは、自分の意見を押し通してあなたを思い通りに動かそうとする人です。
何でも自分が思った通りにならないと気が済みません。
子どものように癇癪を起すことも少なくありません。
そうした状況は対応するだけで心が折れそうになるものですよね。
職場の上司や先輩であれば、とりあえず言われた指示は「はい」と一言返事をして、最低限必要な業務上の処理をするだけにしてみてください。
相手は意見されるとそれに対応するだけの自信がありません。
指示した方法しか分からないのです。
だから、改善点や別の方法を提案すると激高してきます。
「君は私の言うことを聞いていればいいんだ!」と。
業務の問題点については、もっと上の管理職に相談しましょう。
話し合いにならない人には意見せず、ひとまず「はい」。
これが余計なエネルギーを消費しないコツです。
仕事関係の人は業務が滞りなく進めば問題がないので、淡々と対応することは可能ですが、プライベートで関わる身近な人とはそういうわけにはいきません。
その場合は、「聞こえなかったふりをする」です。
嫌な顔もせず、態度にも表さず、華麗にスルー。
何か要望を押し付けられても、反応を示さない。
いちいち反応して、こちらの意見で応戦すると、相手はモラハラに拍車がかかります。
ギャフンと言わせる方法は論破だけではありません。
「無言の意思表示」
これは論破するより効果があります。
エネルギー消費も最小限。
一時的にあーだこーだ言ってくる人もいますが、そこはグッとこらえて華麗にスルー。
あなたは誰かの思い通りにならないのだ、と言うことをしっかりと示しましょう。
④困難な課題から距離を置く
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)という、行動理論をベースとした認知行動療法の一種のセラピーがあるのですが、そのプロセスには①アクセプタンス(受容)②脱フュージョン(思考や想像を現実と切り離す)③今この瞬間への気づき④文脈としての自己(俯瞰した目で自分を見る)⑤価値⑥コミットされた行為というものがあります。
これを分かりやすく示したものが、「チョイス・ポイント・モデル」です。
図のように、どうすることもできない困難な状況に対して、とらわれてしまうと「効果的ではない行動」をとってしまうことになり、距離をとるようにすると「効果的な行動」をとれるようになるという傾向が人にはあります。
自分のネガティブな感情をポジティブに変えようとしたりするわけではなく、ただあるがままにネガティブな感情を感じ取り、距離を取ることで、葛藤に対して使っていたエネルギーをより適切な行動に対して使えるようにしていくというものです。
困難な課題に遭遇した時には、まず少し距離をとって、冷静に適切な対応ができる環境を確保するところから始めてみてくださいね。
⑤気持ちを落ち着けて冷静に状況を整理する
距離をとることができたら、まずあなたの感情や考えを整理しましょう。
疲弊してしまっているなら、ひとまず身体の回復に集中して下さい。
身体の充電ができれば、心も安定しやすくなります。
感情と考えの整理方法ですが、自分でできる方法としては「紙に書き出す」こと。
書く瞑想とも言われる「ジャーナリング」ですね。
ただ思いのままに、文脈や矛盾点などを考えず、感情も考えもありのままに書きます。
誰が見るわけでもないので綺麗な字で書く必要はありませんし、汚い考えや感情をそのまま表して構いません。書いている間は「いい子」でいる必要は全くありません。
そうして自分に素直になってありのままを書き綴ると、普段意識していない自分の内側が可視化できるようになります。
「あ、こんなことを思っていたんだ・・・」
と、新たな気付きを得ることで心は安らかな状態になり、グルグルと頭の中を巡らせていた様々な考えが落ち着くようになります。
自分の思考や感情が落ち着くようになると、今抱えている課題に対して冷静に向き合えるようになります。
そうすると、適切な対処法が見つかりやすくなりますし、思慮深く計画的に対処を実行に移すことも出来るようになります。
対処が適切に出来れば、抱えていた課題も小さくなり、乗り越えていくことができるようになります。あなたは前に進んでいけるようになるのです。
利害を考えず、みんなが楽になる方法や幸せになる方法を視野を広げて考えるようにすると、適切な対処方法が見つかりやすくなりますよ。
最後に
人はそれぞれ個性があり、考え方や感じ方も様々。
誰が悪いとか、誰が正しいとか、そんなのは一部の人の価値観であって、ジャッジすることに意味はありません。
違いがあるから対立が生まれてしまうものですが、自分の価値観を押し付けたり相手の価値観を否定したりすることなく、ただ自然な状態を受け入れることが、対立を生まない秘訣なのかもしれません。
話し合いにならない人は、不安が強いタイプの人でもあります。
その不安感に気付き、それをただ受け止めてあげられるだけでもコミュニケーションは改善されます。
しかし、相手の気持ちに気付いて冷静に受け止めるためには、自分の気持ちに気付いて冷静に受け止めることができなければなりません。
だから、まずは自分の心を整えるために距離をとることが大切なのです。
ゆっくり、少しづつ、立ち止まりながらで構いません。
あなたの人間関係が少しでも穏やかなものとなりますように。
<参考>
心理学ワールド87号アクセプタンス&コミットメント・セラピーのこれから
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